とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

親ガチャ問題

こんにちは。冨樫純です。

 


哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル

 


平成期から令和期へ

 


佐伯氏の言う「改革」は、「頑張り」とも解釈できます。

 


平成の30年間の「改革」という「頑張り」は、確かに「頑張って」きました。

だから今後は、「豊かな社会」においてどのような方向へ「頑張る」のがよいのかを考える必要があります。

 


NHK放送文化研究所が5年おきに実施している継続調査によれば、全体的に「未来志向」が減り、「現在志向」が増えています。

 


右肩上がりの経済成長が続いたバブル経済期(おおよそ昭和期)までは、現在よりも未来が良くなると信じられていました。

 


それに対して経済成長が停滞した平成期以降は、現在よりも未来が良くなるとは信じられてはいません。

 


未来は現在と同じか、あるいは現在より悪くなると思われています。現在は苦しくても未来のために「頑張る」ことが前提であった「未来志向」から、未来のために「頑張る」よりも現在を楽しむ 「現在志向」へ変化したと解釈できます。

 


頑張り、努力主義が希薄になっている証拠だといえます。

 


格差社会の進展は、教育における「頑張り」のあり方に影響を与えます。

 


松岡亮二氏の著書『教育格差階層・地域・学歴』(2019年)はそれに一石を投じています。

 


同書によれば、日本は「凡庸な教育格差社会」であり、戦後日本社会は大きく変動したものの、いつの時代にも教育格差があるとしています。

 


教育格差の階層ごとに「頑張り」の意味やその果たしてきた役割は、異なる可能性があります。

 


特に「格差世襲」が叫ばれる現在、階層ごとに「頑張り」のどこが共通しどこが異なるのかを見極める必要があるかもしれません。

 


それは「頑張らない」のどこが同じでどこが違うかを表すことにもなるでしょう。

 


これに関連してユニークなエピソードがあります、SNSスラングとして2021年の「新語・流行語大賞」トップ10に選ばれた「親ガチャ」です。

 


子どもは親を選択できず、家庭環境によって人生を左右され振り回されることをカプセルトイのガチャガチャ(くじ引き)に例えた造語です。

 


「親ガチャ」が大学入学共通テストに出題されたとSNS上で大きな話題になりました。2023年1月に実施されたテストの倫理の問題をめぐってです。

 


問題は「第4問 高校生GとHが交わした次の会話を読み、後の問い(問1~9) に答えよ」で始まります。会話のやりとりを紹介しましょう。

 


G:すごい豪邸・・・ こんな家に生まれた子どもは運がいいね。不平等だな。

 


H:生まれた家とか国とか、個人が選べないもので差があるのは、不平等だとしても変えられないよ。与えられた環境の中で頑張ることが大事だよね。 この家の子どもだって、社会で成功できるかどうかは本人次第だと思う。

 


G:いや、その子どもも、家が裕福なおかげでいい教育を受けて、将来お金を稼げるようになったりするでしょ。運の違いが生む格差は、社会が埋め合わせるべきだよ。

 


H:それって、幸運な人が持つお金を不運な人に分け与えるということ? 運の違いなんて、そもそも社会のあり方と関わる問題だとは思えないけど。

 


G:そう? 例えば、運よく絵の上手な人が漫画家としてお金を稼げるのは、漫画を高く評価する文化が社会にあるおかげでしょ。人の才能も、社会のあり方によって、運よくお金になったり運悪くお金にならなかったりするよ。

 


H:なるほど。けど、才能を成功に結び付けるのは社会だけじゃないよ。漫画家も才能を磨いてプロになるわけでしょ。そうした努力については、個人を評価するべきじゃない?

 


G:一理あるね。ただ、努力の習慣が身に付くのも運による面はあるよ。 地元の学校が「褒めて伸ばす」方針で、何事も頑張って取り組むようになったとか。努力できるようになるかどうかは、社会の仕組みや構造に左右されると思う。

 


H:それはそうかも。ただ、同じ境遇でも、苦学して立派になる人もいればそうでない人もいるし・・・。最終的には、努力は個人の問題じゃないかな。

 


G:するとHは、運の違いが生む格差は全て、個人が努力で乗り越えるべきだと言うの? 幸運な人と同じだけ努力した不運な人が、格差のせいで幸運な人に追い付けないようだと、不運な人の努力は評価されていないとも言えるよ。

 


H:確かに…。ただ、努力も全て運次第だからという理由で、努力する人がしない人と同じ扱いを受けるとしたら、それはやっぱり不公平じゃないかなあ。

 


G:そうだよね・・・。次の倫理の授業が終わったら、先生にも聞いてみようか。

 


本書の問題意識から考えると、「頑張り」・努力主義が格差社会において、運/不運、平等/不平等とどう関わってくるかという問題になります。

 


個人の家庭・教育環境、社会の仕組み構造が相互に絡み合い、結局、「頑張り」は報われるのか、あるいは報われるべきなのかということになります。

 


感想

 


大学入試で「親ガチャ」が問われたのは、受験生たちに考えて欲しい問題だからだと思いました。

 


下記の本を參考にしました

 


『「頑張る」「頑張れ」はどこへいく』

 努力主義の明暗 

 大川清文著

 帝京新書

 

 

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