とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

タキトゥスの思想

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、政治学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル 

 


タキトゥス

 


結局、キケロらの努力にもかかわらず、ローマの共和政は終焉を迎えた。

 


アウグストゥスによる元首政が開始した後も、元老院など共和政の諸制度は残っていたが、実質的には皇帝に権力が集中していった。

 


この後、次第にローマはオリエント的な支配へと近づき、市民が皇帝に隷従する専制政治へと変化していく。

 


このような変化を最もよく示すのが、歴史家のコルネリウスタキトゥスの著作である。

 


属州であるガリアに生まれながら元老院を経て執政官にまでなったタキトゥスは、当時のゲルマン人の姿を描いた 「ゲルマニア」 (98年ごろ) を執筆するとともに、「年代記」(109年ごろ) や 「同時代史」(105-108年ごろ)などの歴史書において、 同時代のローマの皇帝政治の姿を赤裸々に

描いている。

 


タキトゥスが示すのは、帝政への移行によって、いかにローマ人が変わってしまったかである。

 


ここで変化したのは、いわばローマ人の政治的な価値観であった。 共和政の中核にあったのは、自由の理念であった。政治に参加して、自由に発言することこそ、ローマ市民の誇りであり、自尊心の源であった。

 


しかしながら、そのような誇りや自尊心は今や失われてしまった。

 


皇帝の権力の下で、人々は軟弱になり隷従に甘んじるようになった。

 


そもそも長く続く内乱期に、ローマ人は共和政や自由よりも平和を選んだのであり、ここに政治における中心的価値が変わったとタキトゥスは考えた。

 


タキトゥスは、このようなローマ人と対照的なものとしてゲルマン人の姿を描き出す。 平和よりも戦争を好むゲルマン人は勇敢であり、 質素に生活して金銭欲をもたない。 王は世襲ではなく、特定の家柄から選挙される。

 


しかもその権力は絶対的ではない。むしろ戦闘に参加するすべての部族のメンバーが参加する会議こそが、重要な決定を行った。

 


このようにゲルマン人を描くタキトゥスの脳裏には、かつて共和政ローマの姿があったはずである。

 


むしろ共和政ローマに対する彼のノスタルジーこそが、ゲルマン人の描写にも反映されていると

見るべきであろう。

 


タキトゥスの目には、自由の担い手は今やロー

マからゲルマンの森へと移りつつあると映ったのである。

 


タキトゥスの著作の多くはその後失われたが、ルネサンス期のヨーロッパで再発見され、以後、多くの政治思想家や歴史家に読まれることになる。

 


彼が描いた冷酷な政治の現実は、彼が描いた 「自由な」 ゲルマン人の像とあわせて、ヨーロッパ人の政治認識や自己認識に多大な影響を及ぼしたのである。

 


感想

 


戦争が続くと、自由よりも平和を優先して考えるようになると改めて感じました。

 


下記の本を参考にしました

 


『西洋政治思想史』

 宇野 重規著

 有斐閣アルマ

 

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