こんにちは。冨樫純です
独学で、社会学を学んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
家事・育児という不払い労働
近代産業社会と固定的な性別役割の登場について、さまざまな資料によって裏づけてくれる。
なかでも、アン・オークレーの『主婦の誕生』(岡島芽花訳、三省堂)は、代表的な例の一つになるだろう。
オークレーは、「主婦」(housewife)労働の特徴を、次のようにまとめてみせる。
①成人の男には割り当てられず、もっぱら女に割り振られる。
②経済的な依存、つまり近代の結婚における女性の依存的役割と結び付いている。
③労働として認知されていない――いいかえれば、「本当の労働、つまり経済的な生産労働と対照的なものである。
④女にとって、それが主たる役割である。つまり他の役割に優先する。
これらは、現在のぼくたちの社会にも、まだまだ根強い意識だろうと思う。
しかし、すでに何度かふれてきたように、こうした「主婦」が歴史上登場するのは、それほど前のことではない。
オークレーは、それが、産業革命を契機として生まれたものだということを、さまざまなデータの裏づけをもって証明してみせる。
産業革命が女性にもたらした最も重要な影響で、しかも後々までも尾をひいたのが「成熟した女性の主たる役割」として、主婦という近代的役割を生み出したことである。
女性の役割だけでなく男性の役割もまた、産業革命によって大きな影響を受けた。
しかし、男性にとっては、それが主として、就業可能な職業範囲を拡大するという形で家庭外の世界を広げたのにひきかえ、女性にとって、それは、家庭という空間に包み込まれることを意味した。
それまでさまざまな場で生産労働に従事していた女性たちは、産業化の登場によって、「家庭」という場での家事・育児労働へと、その活動が狭められたのである。
こうして作られた[男=外/女=家庭]という近代的な性別分業は、明らかに女性の立場を弱くした。
女たちは、近代産業革命後の社会において、家事・育児労働、という、男と同様あるいはそれ以上の長時間労働を強いられることになった。
しかも、この労働は、男の賃金労働とは異なり、賃金不払い労働なのだ。
つまり、男の労働は、生産労働であり、それゆえ「社会的な意味」のある「公的」な労働であり、
賃金が支払われる労働であるのに対して、女たちの労働(家事・育児労働)は、モノを生産しない、それゆえ「私的」な労働であり、さらに、賃金を支払われることのない「不払い労働」だ。
つまり、簡単に図式化すれば、男=生産労働=「公的」労働=賃金労働・女=再生産労働=「私的」労働=不払い労働という構図が生みだされたということだ。
もちろん、女の「私的」労働よりも、男の「公的」労働の方が、より社会的に価値のある労働として認識されやすいだろう。
また、そもそも、男の生産労働は、女の労働と異なり、賃金が支払われる労働なのだ。ここに、男性の女性に対する優位が、前近代社会にも増して強化されるメカニズムが存在している。
感想
「主婦」が誕生したのは近代社会が原因であるという見方がおもしろいと思いました。
また、たしかに、現代社会にも、まだまだ根強く残っている意識だと思いました。
下記の本を参考にしました
『男性学入門』
伊藤 公雄
作品社