とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

男らしさと社会的逸脱

こんにちは。冨樫純です

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル 男らしさと社会的逸脱

 


男性の男らしさの自己証明へのこだわり、という視点は、けっこう面白い。

 


「男性の多くは、男らしさへのこだわりに取りつかれている」という観点から、現代社会を見ていくと、面白い発見も多いのである。

 


ぼく自身、イタリア・ファシズム体制の成立の背景に、男性の男らしさへのこだわりがある、という分析をしたことがある。

 


それこそ夫婦関係から政治現象まで、こうした男たちの男らしさへのこだわりという視点からの分析は、有効性をもっていると思う。

 


例をあげれば、男性と犯罪、といった問題も、こうした観点からの分析を可能にしてくれる。

 


男性の方が、女性よりも犯罪を犯す傾向が高いということは、多くの犯罪学者が指摘してきたことである。

 


しかし、「なぜ男の方が多いのか」ということをうまく説明してくれる理論はなかなか存在しなかった。

 


一つは、上の点を突っ込んで議論することを、犯罪学者たちはサボってきたといってもいいかもしれない。

 


または、「男が犯罪を犯しやすいのはあたりまえ」という固定観念が強すぎて、この問題に目を向けることをしてこなかったといった方がいいだろうと思う。

 


「男性性と犯罪」といった議論が本格的に行なわれるようになったのは、やっとここ10数年ほどの間のことだ。

 


とくに、フェミニスト(女性解放論者)の研究が目立っている。

 


彼女たちは、男性による、レイプやセクシャル・ハラスメント(性的いやがらせ)の発生の背景に、男性文化の特徴を見つけ出そうとした。

 


つまり、男性中心社会を維持するために、男たちは女性に対する力の支配を行使してきた。こうした支配は、しばしば女性の人格を無視した暴力的な行動をともなう。男性による犯罪は、こうした暴力による男性支配の延長上にある。

 


だから、男性は女性よりも犯罪を犯しやすいのだ、というわけだ。

 


たとえば、マッキノンというフェミニストは、こんなことを言っている。

 


「レイプ犯罪者や連続殺人者は、……その行為をセックスとして、また男として長々と楽しんでいる。それは彼らのためのセックスなのだ」

 


なかなかスゴイ発言だと思う。女性差別に対する怒りはわからないではないが、こうなると、「すべての女性は被害者で、すべての男性は暴力的で犯罪を犯す傾向が高い」ということになってしまう。

 


これもちょっと単純すぎる見方という気がする。

 


しかし、男たちの男らしさへのこだわりが、社会的な病理現象と結びついているケースは少なくないのではないかと考えられる。

 


その意味で、男性学の視点を社会的逸脱の研究に導入することは、これまでにない新しい観点から、犯罪研究に光をあてることを可能にすることにつながるだろうと考えられる。

 


すでに、男性性を犯罪研究と結びつける作業も開始されている。たとえば、J・W・メッサーシュミットの『男らしさと犯罪―理論の批判と再考」などはその一つだろう。

 


彼は、これまでの犯罪研究が、男性性の問題をうまく扱ってこなかったことを指摘したうえで、フェミニズムの観点からの犯罪研究(前出のマッキノンの言葉に集約されるような、支配を志向する男性性にとって犯罪はエロチックな行為であるといった視点からの分析)を批判的に概観し、そこから、男性と犯罪の分析を、男性に男らしさを求める社会とのかかわりの中で、多元的に考察しようとしている。

 


メッサーシュミットの視点は、多くのフェミニストの言うような、男性による犯罪は、単に「男性役割」の延長である、という視点に批判的である。

 


しかし同時に、男性の行為は男らしさの枠をはめられていることを指摘する。そして、男性による犯罪は、ある特定の社会状況の中で、男性が自身の男らしさを示すための一つの手段であることを明らかにする。

 


つまり、男性による犯罪は、男らしさを達成することが他の手段(たとえば金・学歴・地位など)では不可能なときに、その埋めあわせとして行なわれる社会的実践であるというのである。

 


確かに、男性の犯罪の多くに、こうした傾向はあると思う。

 


学生時代、モノが欲しいわけでもないのに、度胸のあるところを見せるために、万引き」をしたり、お金がほしいわけではないのに、ツッパッている、ところを見せるためにカツアゲしたりする、なんていうのは心に思いあたる人もいるだろう。

 


逆に言えば、高い地位や資産など、他の手段で自分の男らしさ(=他者への優越)が示せる人は、つまらない犯罪に走る傾向は低くなるということでもある。

 


ここから、彼は階級・人種・世代といった視点、つまり彼らをとりまく社会的条件とのかかわりで、男性の犯罪を多元的に分析していくのである。

 


感想

 


おもしろい視点だと思いました。

 


男らしさに取り憑かれると、犯罪者になりかねないと思いました。

 


下記の本を参考にしました 

 


男性学入門』 

 伊藤 公雄

 作品社

 

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