こんにちは。冨樫純です。
独学で、社会学を学んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
「秘密」は人間関係に奥行きをもたらす
ジンメルの「秘密」論から浮き彫りになってくることを最後にもう一度確認しておこう。
まず、ジンメルの観点からすると、「秘密」とは、直接的には相手に対して故意に情報を隠蔽しておく状態を指すが、もっと広義には私たちに原理やメカニズムがきっちりと見通せないような状態をも意味する。
その結果、私たちのコミュニケーションの本質に関わる概念となる。
意図的に作りだされる隠蔽された状態ばかりではなく、すべてを見通せない状態が無意図的に作り出されるということこそが人間の欲望を駆り立てる。
というのは私たちはすでによく見聞きしてしまっているものよりも、未知なるものをもっと知りたいと思い、もっと味わいたいと考える存在だからだ。
しかし全く手がかりのない未知なるものよりも、その性質や特徴をある程度かいま見れるようなものにこそ心魅かれる。
そこに「秘密」が私たちの「生」に肯定的に作用する理由がある。
それは事物に対する未知性としても現われるだろうが、他者との関係において「秘密」は、人間関
係に限りない奥行きをもたらすものとして理解される。
だから距離がゼロという「融解集団」的な人間関係は、たとえ親密な関係においても理想状態として想定することはできない。
というよりも理想状態として想定すること自体が大きな危険をはらんでいる。
たとえば私を理解してくれる人はだれもいないといった絶望は、私のすべてを受け入れ、すべてを理解してくれる他者を求める過剰な期待による場合が多い。
むしろ、私のすべてを受け入れ、すべてを理解してくれる他者、なんてどこにもいないことをしっかり自覚して、適度な距離があり、お互いの「秘密」を前提とした人間関係においてこそ互いを慮ったり、想像力を働かせることで「相互の関係を深く味わう」ような親密な社会関係の形成が可能になるといった発想の転換が必要なのだ。
私は、ジンメルの「秘密」論は次のように読み取ることが可能だと考えている。
それは他者とのコミュニケーションに関して大きなヒントを与えてくれるものだ。
ほんとうに信頼できる他者とは、お互いのことをすみずみまですべてわかり合ったりすべての考え方が同一化するようなこととは全く次元の違う存在だということ。
他者を理解したり、他者を愛したりするためには、人と人との「距離」ということに私たちが鋭敏になる必要があること。
また「近代」という時代はそのことを可能にし、さらにそのことを私たちに要求している時代だということ―こうした点についてジンメルの秘密論は、豊かな内容を提示しているのだ。
感想
他者を理解したり、他者を愛したりするためには、人と人との「距離」ということに私たちが鋭敏になる必要があるこという箇所がおもしろいと思いました。
現代では一般的な考え方として、定着している人と人との「距離」をジンメルはこの時代に気づいていたようで、尊敬します。
下記の本を参考にしました
『ジンメル・つながりの哲学 』
菅野 仁