こんにちは。冨樫純です。
独学で、社会学を学んでいます。
そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。
感想も書きたいと思います。
話題
静かな病院―生産領域と再生産領域という捉え方
今では、結核は不治の病ではなく、そもそも予防接種の徹底で結核に罹患する人も稀になりました。
それでも、子ども時代に風邪をこじらせて肺炎になったり、怪我をして入院したことのある人もいるかと思います。
そうした経験をもつ人はわかるかと思いますが、病院のなかは特別の時間が流れています。
たしかに、朝の外来受付は殺気だっていますが、入院患者は検査や診察で待たされても、あまり苛立っていません。
病室のなかは静かで、みな穏やかな口調で会話しています。なぜ病院はのんびりしているのでしょうか。
近代の資本主義的生産様式をもった産業社会は、大きくわけて「生産領域」と「再生産領域」に区分されます。
このうち、生産領域とは、「モノや情報を作り出す領域」、工場やオフィスなどの企業体です。
これに対して、「再生産領域」とは、「生産領域で働く労働力を再生産する領域」、たとえば家族です。
家族の場合、二重の意味で再生産活動の場となります。まず、家族の機能の一つは、子どもを作り、育てることです。
子どもはやがて成長して、社会の新しい労働力となります。家族は新しい労働力を常に再生産し、産業社会に供給し続けるのです。
次に、家族はもっと日常的にも労働力を再生産します。生産領域で働く人間は、疲れて家に帰ります。
そこで風呂に入り、食事をし、睡眠をとることによって、翌日、また元気に働きに出かけます。
家族はこの点でも労働力を再生産し、毎日、生産
領域へと送り出しているのです。
この「生産領域」と「再生産領域」は、どのように異なるのでしょうか。
まず第一に、生産領域では人間の活動はその経済的価値によって評価されますが、再生産領域での活動には経済的価値が与えられません――具体的にいえば、賃金が支払われません。
学食の女性スタッフは食堂でカレーを作ると賃
金をもらえますが、家でカレーを作っても賃金がもらえません。
それは、前者が生産活動であるのに対して、後者は再生産活動だからです。第二に、生産領域と再生産領域とでは、時間を評価する基準も異なります。
生産領域においては、時間の価値は、単位時間内にどれだけ生産活動に貢献したか、つまり効率性・生産性によって評価されますが、再生産領域では、それ以外の多様な評価基準が用意されています。
家族とのんびりとすごす時間、趣味に熱中する時間……それは、経済的観点からは評価できない時間の使い方です。
だから、効率性という基準のみで時間を、そして労働力を切り売りすることに疲れた現代人は、再生産領域における多様な時間の使い方にくつろぎを見出します。
病院もまた、家族と同様、再生産領域に属する組織です。生産活動で疲れ、病んだ人々が、病院にやってきます。そして、病院で元気を回復し、また生産領域へと復帰していきます。だから、病院では生産領域とは異なり、ゆっくり時間が流れているのです。
感想
生産領域と再生産領域という捉え方がおもしろいと思いました。
また、現代人は生産領域を先ず優先させる傾向があるように感じました。
下記の本を参考にしました
『ライフイベントの社会学』
片瀬 一男著