とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

「強い紐帯」と「弱い紐帯」

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。

 


感想も書きたいと思います。

 


話題  「強い紐帯」と「弱い紐帯

 


社会的ネットワークの形成において、情報化社会におけるコミュニケーション・メディアが果たす機能には大きな差異があることは従来からも指摘されてきました。

 


宮田加久子(「きずなを なぐメディア」NTT出版)は、携帯メールのみ利用者とパソコンメールのみ利用者のもつネットワーク特性を比較し、パソコンメールの利用者は、ネットワークの規模が大きいだけでなく多様性が高いものの、携帯メールのみ利用者と比べさまざまなサポートを提供する「強い紐帯」の数には違いがないことを明らかにしました。

 


またその一方で、携帯メールが「強い紐帯」である家族や近距離居住者とのコミュニケーションに多用されるのに対して、パソコンのメールは「弱い紐帯」である遠距離居住者とのネットワークの活性化に貢献することを明らかにしています。

 


ここでいう「強い紐帯」「弱い紐帯」というのは、アメリカ人の転職を研究したM・S・グラノヴェター(「弱い紐帯の強さ」野沢慎司編・監訳『リーディングス ネットワーク論』勁草書房)が提案した概念です。

 


「強い紐帯」とは、親戚や親友、恋人などふだんから濃密な接触をしている人との結びつきであるのに対して、「弱い紐帯」とは、たとえば昔の恩師や同級生、顔見知りだけの人、知り合いの知り合いなど、あまり頻繁な接触がない人との結びつきをいいます。

 


就職をしようとしたとき、「コネ」になるのはどちらでしょうか?

 


おそらく親身に相談にのってくれる「強い紐帯」であると答えるでしょう。

 


ところが、グラノヴェターアメリカ人の転職を研究するなかで、むしろ「弱い紐帯」が転職に役に立つ―実は「弱い紐帯」が強い!と主張したのです。

 

それによると、たとえば永沢君と藤木君が「強い紐帯」で結ばれ、永沢君と小杉君も「強い紐帯」で結びついていると、結果的に藤木君と小杉君の間にも強い紐帯がある確率が、永沢-藤木関係、永沢-小杉関係の双方または片方が弱い紐帯である場合に比べて高くなります。

 


ここから推測されるのは、強い紐帯はすべての個人が強い紐帯で結びついている集団―これを「クリーク」といいます―を形成しやすいので、ほかの集団と最短経路で結びつく「局所ブリッジ」にはなれないということです。

 


これとは逆に弱い紐帯は、異なる集団の間を最短距離で結ぶ「局所ブリッジ」になる可能性があります。

 


たとえば、永沢君とさくらさんが弱い紐帯で結びついているとすると、この二人の関係は永沢君ら屈折した男子集団と、さくらさんや穂波さん(たまちゃん)、野口さんら女子集団を結びつけるブリッジになります。

 


こうして、弱い紐帯は下位集団同士を結びつけてネットワークを拡大するとともに、ほかの異質

な集団から新しい情報をもたらすことができます。

 


この点で、弱い紐帯は集団の境界を越えた情報伝達に有利なので、これを利用することで個人は自分が属する集団では手に入らない耳寄りな情報にアクセスすることができます。

 


この情報のなかに就職や転職に関する情報なども入っているので、実は弱い紐帯の方が転職に有利にはたらく―これがグラノヴェターのいう「弱い紐帯の強さ」です。

 


ただし、日本でもこのグラノヴェターの着想をもとに転職の研究がされましたが(渡辺深「転職」「社会学評論』四二(一))、その結果、アメリカとは逆に「強い紐帯」が有利な転職をもたらすことがわかりました。

 


日本の転職はやはり「強いコネ」が必要なのでしょうか。

 


ただ、いずれにせよ他者との関係が人々に何らかの「利益」をもたらすことは事実です。

 


感想

 


転職には、人脈が大事と言われますが、この弱い紐帯をたくさんつくることだと思いました。

 


下記の本を参考にしました

 


『ライフイベントの社会学

   片瀬 一男著

 世界思想社