とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

 恋愛結婚の始まり

『ライフイベントの社会学』からこんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。

 


感想も書きたいと思います。

 


話題 

 


いつから恋愛結婚が始まり、定着したのか

 


こうした「純粋な関係性」の進化について、ギデンズは、現代社会においては「ロマンティック・ラブ」から「コンフルエント・ラブ」への移行が生じている、といいます。

 


この「コンフルエント・ラブ」は、ギデンズの『親密性の変容』(而立書房)においては、「ひとつに融け合う愛情」と訳されています。

 


ギデンズはまず、「コンフルエント・ラブ」に先立つ「ロマンティック・ラブ」の歴史的意義を

次のように説明しています。

 


「ロマンティック・ラブ」というと、日常用語では恋愛ドラマに出てくる素敵な恋愛などを意味しますが、社会学では「ロマンティック・ラブ」とは、恋愛・結婚・性愛の三位一体を前提とする規範的な恋愛の形態を意味し、これが登場したのはヨーロッパでは18世紀後半と考えます。

 


それ以前の社会では、恋愛と結婚はまったく別のものでした。

 


上流階級では政略結婚による家族集団のネットワーク形成、庶民階級では労働力の確保と家の再生産「 跡継ぎを作ること―が結婚の意味でした。

 


したがって、恋愛は家族外で行われるのが普通でした。

 


中世ヨーロッパの騎士は既婚の貴婦人に(情熱恋愛)をし、江戸の男たちは吉原といった遊郭で遊女に恋をしていました。

 


ギデンズによれば、「前近代のヨーロッパでは、ほとんどの婚姻は、互いの性的誘引ではなく経済的事情をもとにおこなわれていた。

 


貧しい人びとの間で、結婚は、農業労働力を調達する手段であった。

 


辛い労働に絶えず追われた生活が、性にたいする熱中をもたらすことなど、ありそうもなかったのである。

 


「17世紀のフランスやドイツの農民層では、接吻や愛撫等の性行為と結びつく肉体的愛着は、夫婦間ではめったに見られなかったと言われている」(ギデンズ、前掲書、63ページ)。

 


夫婦間でもセックスは生殖、つまり家の跡継ぎまたは新たな労働力を作るためのもので、そこには恋愛感情も性的興奮もありませんでした。

 


しかし、18世紀のキリスト教復興運動のなかで愛情を理想化する傾向が出現し始めると、恋愛によって感情的に結ばれた男女が結婚を通じてその愛情を永続化することが望ましいという「ロマンティック・ラブ」の観念が誕生します。

 


ロマンティック・ラブは、恋愛と結婚とセックスという、もともと別個に考えられてきた異質なものを結びつけるという歴史的意義をもちます。

 


「ロマンティック・ラブは、一人ひとりの生に物語性という観念…(中略)…をもたらしたの(中略)…ロマンティである。

 


物語ることは、「ロマンス」という言葉の担う意味のひとつであるが、ロマンティック・ラブの高まりは、小説の登場とほぼ同時に生じ、両者の結びつきは、新たに見いだされた叙述形式のひとつとなっていったのである」(ギデンズ、前掲書、64.5ページ)。

 


好きな人と恋愛して結婚して、セックスをする。

 


こうした現代にも通じる恋愛観・結婚観は近代初頭に誕生したのです。

 


ギデンズによると、こうして生まれたロマンティック・ラブの観念は、親族関係や家の再生産・維持の義務から夫婦の情愛を切り離したといいます。

 


そして、これによって男女を自律的な紐帯によって結びつけ、世代の継承から解放したとされます。

 


この点で、こうした男女のロマンティックな関係は、「純粋な関係性」―ほかに目的をもたず、それ自身のために営まれる関係性―の初期形態ですが、これは同時に強いモノガミー規範(一夫一婦制の規範)をともなうので、夫婦関係は「永遠」で「唯一無二」という抑圧的な特質を備えることになります。

 


その結果、同時期に起こった産業革命によって職住分離が進行して、男性たちが外の職場(企業)に働きに出ていくと、女性を家族という「女たちの居場所」に押し込める働きをしてきたのです。

 


したがって、ロマンティック・ラブは、性別役割

分業にもとづく「近代家族」においては、しばしば女性の「家庭における従属状態」と「外部世界からの相対的孤立」―家庭にいて夫に経済的に従属し、社会から孤立した専業主婦になること―を帰結したのです。

 


これでは全然「ロマンティック」ではありません。

 


そのため、とくに現代の若い世代では、性別役割

分業意識が解体しているので、ロマンティック・ラブは忌避されるようになったのです。

 


実際、2011年の調査によっても、「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきだ」と考える者は、大学生男子で19%、女子で13%となっています。

 


そこで、若い世代では「純粋な関係性」のみにもとづく「コンフルエント・ラブ」がいる選好されるようになった、というのです。

 


このような変化を、ギデンズは、「純粋な関係性」の進化として捉えます。

 


現代の「コンフルエント・ラブ」は、対等な条件のもとでの感情のやりとりであり、能動的で自律的な愛情です。

 


この進化した「純粋な関係性」が保たれる条件は、関係を継続することに価値があるということを双方の側が認め合うことのみです。

 


そして、家族関係もこのような関係が成立しうるかぎりにおいて営まれるものになっているというのです。

 


その結果、欧米のように、個人の「高度な選択性」が増大した社会においては、近代家族にみられる性別役割分業が固定化した閉鎖的な関係から、より流動的・偶発的な家族関係になると予想される、といいます。

 


というのも、コンフルエント・ラブでは、再び結婚と恋愛の結びつきが弱まるからです。

 


ロマンティック・ラブが、しばしば結婚式での祝辞で語られるように、「特定の人」との永続的な関係を願うのに対して、コンフルエント・ラブは「特別の関係」が純粋に優先されるので、こうした「特別の関係」にふさわしい相手を、その都度、探すことになるからです。

 


感想

 


恋愛結婚にキリスト教の影響があるとは思いませんでした。

 


そこが一番おもしろかったです。

 

 

 

下記の本を参考にしました

 


『ライフイベントの社会学

   片瀬 一男著

 世界思想社