とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

社会科学の最も重要な目的とは

こんにちは。冨樫純です。

 


「アクション・リサーチ」についてのコラムを紹介します。

 


理想的だとは思いますが、社会科学が社会や制度の改善に資することは大事なことだと思いました。

 


「アクション・リサーチ」という語を学術論文の中で初めて用いたのはレヴインである(Lewin, 1946)。

 


彼は、社会科学の最も重要な目的は社会や制度の

改善に資することであるという信念に基づき、現場への介入活動を通じて共同体がかかえる問題の解決や向上をめざすという実践的研究の重要性を提唱した。

 


以来、アクション・リサーチは、組織経営、教育、医療、福祉、国際協力、町づくり等々のさまざまな領域において進展してきた。

 


アクション・リサーチャーを標榜する研究者が有する研究理念は一様ではなく、現場と一定の距離をおいて「客観的」な視点で問題を見極めようとする実証主義的な立場もあれば、現場に深く参与し、現場の人々との「共同実践」を通じた問題解決をめざす立場もある。

 


ただしいずれの立場であれ、アクション・リサーチには、「問題を同定し、状況を診断して解決に向けてプランを練り、介入活動をして、活動の結果を評価し、そこで学んだことを次の介入活動のプランに生かす循環的なプロセスをたどる」という共通の流れがある(箕浦,2009, 57 頁)。

 


このとき留意すべきなのは、何をもって現場の改善、すなわち「ベターメント」(betterment)とするかを見極める作業には、研究者を含めた当事者がもつ特定の価値基準が反映されるということである。

 


その意味で、アクション・リサーチは価値中立的ではありえない。

 


また、アクション・リサーチの基底には、「人々の現実認識の構造や見方を変えることで行動変容をめざすプロセス」が含まれている。

 


したがって研究者は、「日常を生きている人々から主体性を奪い去ることなく、その人々に研究成果を還元していくにはどうしたらよいか」を考えながら研究を推進する必要がある(箕浦,2009,63頁)。

 


研究を推進すること自体が現場での実践に再帰的に影響を及ぼすという自覚をもつことも重要である。

 


アクション・リサーチにおいては、当該の現場の人々に対して研究成果を還元するだけでなく、その成果を同じような事情をかかえる他の現場の人々に向けて発信することにも大きな意義がある。

 


ローカルな現場と別のローカルな現場をつなぐ「インターローカリティ」の実現には、「生々しい記録をちょっとだけ一般化」することが求められる(杉万,2006)。

 


矢守らは、1995年の阪神・淡路大震災における神戸市職員たちの体験の記録を「クロスロード」という防災ゲームとして再構成した(矢ら,2005)。

 


完成したゲームは、防災学習のツールとして全国各地の自治体や教育現場で活発に用いられている。

 


参加者はゲームを通じて災害時の意思決定に際する困難や葛藤を追体験し、自らの問題としてそれらに向き合う。

 


矢守らの試みは、1つの現場での実践を地域や時間を越えて広範囲の人々へ受け渡すことを可能にしたという点できわめて意義深いアクション・リサーチといえる。

 


下記の本を参考にしました

 


社会心理学』 

 池田 謙一 他2名

 有斐閣