こんにちは。冨樫純です。
「フィールドワーク」についてのコラムを紹介します。
フィールドワークというと文化人類学で用いられるイメージがありますが、心理学でも用いることに意外な感じがしました。
フィールドワークという研究方法論のあり方は、その理論的視座である「解釈的アプローチ」と深く関わっている。
解釈的アプローチは、主体と文脈は相互に依存し合う、すなわち「主体は、他者とともに特定の文化的文脈の中で、意味を共同で構築する」(箕浦, 1999, 12 頁)という考え方に立っている。
したがって、研究上の分析単位は個人ではなく「文脈とその中の個人」である。
社会心理学におけるフィールドワークは、「持続性と関与性」「柔軟性と自己修正性」「微視性と全体性」という3つの特性をもつ(箕浦, 1999, 15 頁)。
「持続性と関与性」とはさ日常生活が行われている場に研究者自らが参与し、継続的に観察を行うことを意味する。
「柔軟性と自己修正性」とは、観察を進めながら随時、研究の枠組みや焦点を見直し、進路修正を行っていくことをいう。
「微視性と全体性」とは、共同体における制度や慣習、規範といったマクロなレベルの事象と、そこで展開される個々人の行動や語りなどのミクロなレベルの事象との双方に目を向けることである。
個人の微視的な行為への関心は、マクロな社会のあり方に主眼をおく文化人類学等とは異なる心理学ならではの特質である。
フィールドワークの基本は参与観察である。
フィールドへの参与を果たした研究者は、フィールドの全体像を把握するための「全体観察」期間を経て、「リサーチ・クエスチョン」を絞り込みながら徐々に「焦点観察」へと移っていく。
フィールドにおいて「ものが見えてくる」ためにはリサーチ・クエスチョンが不可欠であり、よい問いを立てることとよい研究を行うこととは表裏一体の関係にある。
なお、焦点観察を行う際には、観察のユニットを明確に設定し、観察すべき事象のサンプリングに関して「観察者バイアス」が生じないように留意する必要がある。
また、フィールドワークにおいては、データの収集と分析が循環しながら同時に進行する。
分析の道具となる理論枠組みを見いだし、それを用いてフィールドワークを分析することによって、次に収集すべきデータが何であるかを見
極めることができる。
いったん選定した理論枠組みが目の前のデータを解釈するうえで不十分な場合には、別の枠組みを選び直す作業が必要になることもある。
フィールドワークで生起する事象の意味を適切な理論枠組みを用いて読み解き、自らの「問い」に対して「答え」を得ることが、仮説生成型研究としてのフィールドワークの1つの目標である。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名