とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

大学の学費は誰が負担するか

こんにちは。冨樫純です。

 

ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。


法律的なものです。


質問の内容は、主に女性目線からものです。


質問


兄は私立大学の4年生、私は女子短大生。


4年制大学編入試験を受けて専門資格にもチャレンジしたいと父に相談したら、「女が勉強するとロクなことにならない」ですって一。


兄は4年制に行けて、私はどうして行けないの。


解答


法律は、だれよりもまず、次世代を担う大切な子どもを保護し育成する責任を果たしてもらうよう、子どもにもっとも近い存在である親にさまざまな権利を認めました。


これが、いわゆる「親権」と呼ばれる権利です。


民法では、未成年の子どもは父母の親権に服すると定められています (同818条)。その結果、子どもを守り育てるため、親には、子どもに対するいろいろな重要な権利が認められています。


①子どもの監護教育権 (民法 820条)一子どもをどのように育てどのような教育を受けさせるかを決める権利


②子どもの居所指定権 (同 821条)一子どもがどこに住むか決める権利


③子どもの懲成権 (同 822条) 一子どもを必要な範囲で叱ったり、罰を与えたりする権利


④子どもの職業許可権 (同 823条)一子どものつく職業に対して許可を与える権利


⑤子どもの財産管理権 代表権 (同 824条)一子どもの財産を管理したり財産的な法律行為で子どもを代表する権利


⑥子どもの婚姻同意権 (同 737条)一子どもの結婚に対して同意する権利


⑦子どもの医療同意権一手術治療など必要な医療について同意する権利


⑧子どもの縁組同意権 (同 797 条 817条の 6)一子どもの養子縁組に同意を与える権利


⑨子どもの命名権一生まれた子どもに名前をつける権利

 

大昔は、子どもに対する親の権利(父権=パト リオ·ポテスタス)は絶大なもので、ローマ法の生殺与奪の権利は文字どおり、子どもを生かすも殺すも父親(家長)の意のままという信じられない内容のものでした。


歴史的にみると、親の子どもに対する支配権と親権の内容 (いずれも未成年の子どもに対するもの)

いう色彩から、次第に未成年の子どものための監督保護権という発想へと転換をしてきました。

 

そして、現代では、 こうした 「親の権利」 は、子どもの利益や幸せのために親に認められるものとされ、むしろ、「親の義務」とさえ考えられるようになっています。


2011年5月の民法の一部改正で、民法820条に「子の利益のため」 という目的が明記されました。


それでは、子どもに対して負う親の義務や責任というのはどういうものでしょうか。


子どもを監護し教育する権利と義務の双方を負担しています(民法 820 条)。 監護とは身の回りの世話や保護のことで、教育は知能や技能を伸ばし、しつけをすることなどを指しますが、両者を区別する必要はほとんどないでしょう。


つまり、親 子どものもつ能力や適性に従い、またその発達段階に応じて、子どもが必要とする監護教育の責任を果たさなければならないのです。


そして、当然に子どもの監護教育にかかる費用も親が負担しなければなりません。


両親が別居していても父母が婚姻中は、母親が別に暮らす父親に対して監護費用、養育費 (民法766条) や婚姻費用の分担という形で請求することもできますし (同760条)、あるいは子ども自らが親に対する扶養料という形で請求することも考えられます (同877条)。


親の未成熟の子に対する扶養義務の程度は、夫婦の間の扶養の義務と同じように、「生活保持の義務」と理解されています。


大学など高等教育の費用が親の子どもに対する扶養義務の範囲に入るかどうかについては、いろいろと考えかたの違いがあります。


親の経済力、職業、社会的地位、子ども自身の能力、適性、経済的援助の必要性などを考慮して、

援助することになっています。


たとえば、離婚して別居している父親に4年制大学に進学するための学費および生活費を求めた事件で、裁判所は、その子が成人に達し、かつ、健康であることの一事をもって直ちに、その子が要扶養状態にないと断定することは相当ではないと

したケースがあります (東京高裁 2000· 12·5決定)。


大学·短大への進学率は、2011年で56.7%に上昇し、私立大学の授業料負担は1年間で平均134万円にもなっており、国立大学が65万円ですから、2倍以上になっています。


今日では、人々の専門教育をめざす傾向は強まり、子どもが社会的に一人立ちするためにも大学教育の必要性は高まっています。


あなたも、両親の資力、あなた自身の勉学への意欲や能力に応じて、相当な範囲で経済的援助を求めることができます。


お兄さんが4年制の大学の費用を負担してもらっているのに、「女性だから高等教育の必要がない」 というのがお父さんの反対する理由だとすれ

とんでもないことです (東京高裁 2010·7·30 決定)。


お父さんは、他の「高等教育の費用」の援助を求める権利(扶養を受ける権利)を尊重しなければなりませんし、高等教育へアクセスする権利は子ど

もの権利条約にも定められています (同条約 28条(c))。


お父さんに大学での授業料や学費相当分を貸してもらい、卒業して就職した時点から返済するという契約も法的には可能でしょう。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ