とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

セックスをリードするのは男性か

こんにちは。冨樫純です。


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。


法律的なものです。


質問の内容は、主に女性目線からものです。


質問


彼に「愛し合っているんだからいいだろう ?」と迫られてしまいました。


彼のことは愛しているけど、今はまだなんとなくいや。


でも、こんど断ったら彼を怒らせちゃいそう。


どうしよう。


解答


あなたのほうから、好きな人とセックスしたいと思うこともあるでしょう。


そうしたあなたの気持ちと彼の気持ちが一致してセックスするなら、あなたの決定は尊重されます 。


もちろん、彼も自分のことは自分で決められる成熟した人でなければなりません。


刑法は、13歳未満の子どもに対してわいせつ行為をしたら、相手の承諾があったとしても強制わいせつ罪になると規定しています (同176条)。


自分のする承諾の意味をまだ理解できない年齢だからです。


ところで、都道府県の定める青少年保護条例で、18歳以下の青少年に対する「淫行」 や 「みだらな性行為」を処罰しているものがたくさんあります。

 


「もしかすると 18歳以下の彼とセックスしたら犯罪になってしまうの?」と思う人もいるかもしれませんが、心配はありません。


最高裁判所は、こうした条例について、もし、広く青少年に対する性行為一般を処罰するとしたら、そんな条例は許されない。


処罰される「淫行」というのは、「青少年を誘惑し、威迫し、困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行なう性交又は性交類似行為」のほか、「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をいうと述べています(福岡県青少年保護育成条例事件=最高裁大法廷 1985 · 10· 23 判決)。


ですから、年下の彼とのセックスが処罰されることはありません。


しかし、こうした条例は、処罰の範囲があいまいで、性的自己決定権を侵害するおそれが強いので

、批判されています。


あなたはセックスしたくないのに、彼が望んでいるときは困りますね。


「オレのことを本当は愛してないんじゃないか?」 なんていわれてしまうかもしれません。


彼との仲がこわれてしまうかも、と不安です。


でも、あなたの気持ちは彼の気持ちと同じ重みがあるのです。


社会には、性に関することは、男性が決めるもので女性は男性の決定に従うものだ、という役割分担意識識があります。


ですから、自分の意思が通らないと、自分がないがしろにされたような錯覚をしてしまう男性も多いのです。


しかし、2人のセックスは2人で対等に決定されなくてはなりません。


セックスによって、彼はあなたとの愛を確かめられて、幸せになるかもしれません。


あなたも幸せになれるかもしれません。


でも、女性だけに妊娠の可能性があります。


今のところ、100%完壁な避妊方法はありません。


中絶は女性の身体と心に大きな打撃を与えます。


女性にとって、セックスするか否かの自己決定は、妊娠した場合に産めるかどうかという判断と完全に切り離すことはできないのです。


「完壁な避妊方法がない以上、本来は、男性がセックスの決定をするということは、女性が妊娠して産むことを決定した場合には、父親としての責任を果たすことを引き受ける決定をするということです。


妊娠した女性が産むという決定をしたら、それを男性がくつがえすことはできません。


2人でセックスの合意をする前に、子どもができた場合の対応について、よく話し合っておくべきでしょう。


しかし現実には、セックスの結果妊娠したら、そのマイナス面は中絶によって女性だけが負担しています。


避妊をきちんとすることで、望まない妊娠はかなり防ぐことができます。


避妊は女性だけがすることではありません。


カップルが自分たちにふさわしい避妊方法を選べ

る必要があります。


しかし、安全で確実な避妊方法の普及は、「性の乱れ」につながるとしてこれまで妨げられてきました。


男女の対等な性関係を育てる性教育や避妊教育も、「寝た子を起こす」 と反対されるのです。


日本では、1999 年まで経口避妊薬(低用量ビル) の使用は認められませんでした。


ピルについては、重大な副作用がある、女性だけが避妊の負担を負うのはおかしい、として反対する女性の声も有力です。


その場合、主にコンドームで避妊することになります。


コンドームは、避妊のためだけでなく、HIV/AIDS などの性感染症 (性行為によって感染する病気) からお互いの健康を守るためにも重要です。


しかし、コンドームの避妊失敗率はかなり高いのです。


また現実に多くの女性が月経異常の治療薬である副作用の大きい高用量ビルを避妊のために使ってきたことを考えると、副作用の少ない低用量ビルという避妊の選択肢が認められたことは評価すべきでしょう。


2011年5月からは、モーニング·アフター·ピルとも呼ばれる緊急避妊薬も承認薬が発売されるようになりました。


社会がこんなありさまですから、避妊の重要性をわかっていない男性は多いのです。


いいかげんな知識で 「腔外射精をすればだいじ

ょうぶ」とコンドームを拒否する男性もいます。


女性のほうも、正確な知識をもっていないので、「1回くらいだいじょうぶだろう」と安易な解釈をしてしまうことがあります。


男性は「性に関することは男がリードするものだ」と育てられがちです。


女性は 「性に関することで女が積極的に意見をいうのは、はしたない」と教えられがちです。


男性は、経済的、社会的に女性より優位にあります。


だから、女性は妊娠を望んでいないのに、避妊をしないセックスをせざるをえないことが多いのです。


その結果、中絶が最後の手段になっています。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ