とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

命の値段

こんにちは。冨樫純です。


「命の値段」についてのコラムを紹介します。


計算式には問題があるとは思いますが、代わりになるようなものも難しいと思いました。


死亡の場合の損害賠償額の中でもっとも金額の大きいのは、逸失利益(その事故で死ななかったならば一生の間に稼いで残したであろう金額)です。


逸失利益は、年収×就労可能年数-生活費-中間利息いう計算式で求められます (生活費は被害者本人の分のみ。


中間利息を差し引くのは、たとえば、今後20年間働けるとして計算した結果出てくる数字は、20年先に受け取るものですから、それを現時点で先取りするといくらになるかを計算します)。


一見もっともらしい計算式なのですが、かなり問題もあります。


たとえば、同じ事故で死亡しても、被害者の年収や就労可能年数が違えば、賠償額が異なりますから、①所得の多い人の命は低い人よりも高額だという「命の値段」 の格差が生じ、平等という視点からは割り切れない感じがします (年収800万円の会社員と 4000万円の開業医の場合を想定して下さい)。


また、子どもや学生など職についていない者が被害者の場合は、将来職についたと仮定して計算し、賃金に関しては賃金センサスと呼ばれる賃金統計を利用して、(男女別の)平均賃金を基準とします。


ところが、この数字は統計上のものなので現存する男女間の賃金格差を反映しており、たとえば、10歳の男児と女児が同じ事故で死亡した場合、計算の結果としての逸失利益の額は、男児が女児よりかなり大きい数字となります。


本来あってはならない男女間の賃金格差を反映した平均賃金統計を賠償額算定に用いること自体、大きな問題だといえましょう。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ