とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

育児休業と賃金保障

こんにちは。冨樫純です。


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。


法律的なものです。


質問の内容は、主に女性目線からものです。


質問


私は子どもを産んでも仕事を続けたい。


でも、赤ん坊のうちは自分で面倒を見たい。


なんとか子育てしながら働き続けることはでき

ないのかな。


解答

 

もともと労基法は働く女性の出産と子育てに関わる最低条件として、産前6週間(男女を問わない育児休業、多胎妊娠の場合には14週間)、産後8週間の産前産後休暇 (同 65条) と1日2回各々30分の育児時間(同67 条) を定めています。


しかし、これだけでは十分な育児時間を確保できません。


そこで、育児、介護休業法は、労働者に対して1歳未満の子(養子も含む) を養育するための休業を請求する権利を認めるとともに (同5条)、使用者に

対しては育児休業付与義務を課しました (同6条)。


また、 1歳までの育児休業が終了しても、その子を保育所に入所できないなどの特別の事情がある場合には、1歳6カ月まで引き続き育児休業を取得できることとしています (同5条3項, 同施行規則4条の 2)。


正社員でなく、パートなどの有期契約で働いている場合でも、雇用期間が1年以上で、養育する子が1歳になって以降も引き続き雇用されると見込まれる場合には、有児休業を請求することができます (同5条1項)。


労基法の産前産後休暇や育児時間と異なり、育児休業を請求できるのは男女を問いません。


したがって、たとえば妻の方が先に6カ月間の育児休業をとり、残りの期間について夫がとるなどして夫婦交代で育児に従事することができます (この場合, 休業可能期間は1歳2ヵ月まで延長されます。 同9条の2)。


労働者から1カ月以上前に育児休業の請求を受けたときには、使用者は原則としてこれを拒むことができません。


したがって、使用者がいろいろ口実をつけて育児休業を認めないときでも、育児休業期間として請求した日から自動的に労働義務が消滅します。


育児休業をとります!」と宣言して会社を休むことができるのです。


使用者は、休業の申出や育児休業をしたことを理由として労働者に対して解雇その他の不利益取扱いをしてはなりません (育児 介護休業法 10条)。


また、育児休業期間が終了して労働者が復職を求めたときには、使用者はもとの職場(原職かまたは原職相当務)に復帰させることが求められます(同22条)。


子どもの育児のために休業する権利はあくまでも労働者に与えられたひとつの選択肢です。


というのは、仕事から完全に離れたくないとして育児休業をとらなかったり、とったとしてもできる限りはやく職場に復帰したいと望む労働者もいるからです。


そこで育児·介護休業法は、3歳までの子を養育する労働者のために育児休業に代わる選択肢として次の4つの措置を実施するよう使用者に義務づけています (同16条の8.23 条, 同施行規則 34条)。

 

①当該労働者の1日の所定労働時間を原則として6時間とすることの短時間勤務制度


②始業·終業時刻につきー定の時間帯(フレキシブルタイム)を設けて労働者の自由な選択にまかせたり,始業 終業時刻を早めたり遅くしたりすることなどのフレックス·タイム制や時差出動制度


③労働者が請求した場合に所定外労働を免除すること


④企業内託児施設(保育所)を設置 運営したり、ベビーシッターの手配やその費用を負担することなどの託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与


ただし、このうちの②と④は、業務の性質等に照らして①の措置を講ずることが困難な業務に従事する労働者について、いずれかを実施すればよいとされています。


また、もう1つ忘れてはならないことは、小学校までの養育児·介護休業法が、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者についても、育児休業や労働動時間短縮等の措置を講ずるよう使用者に努力義務を課している点です (同 24条)。

 

したがって、使用者は育児休業制を導入すればそれで足りるわけでなく、幼児期の子を養育する労働者に対してもこうした追加的な措置をとることが要請されます。


小学校に入るまでの幼児は、突然熱を出したり、怪我をしたりすることがあります。


そこで、負傷し、疾病にかかった子の世話を行うために、小学校就学前の子を養育する労働者について、1人につき年5日 (2人以上は年10日)まで看護休暇をとることが認められています (同 16条

使用者は、仕事が忙しいからといって労働者からのこうした申し出を拒否することができませんし (同16条の3)、看護休暇の申出や取得したことを理由に解雇その他の不利益取扱いを行うことが

できません (同16条の4)。


育児休業制について最も問題となるのは、育児·介護休業法が育児休業期間中の賃金保障に関して何も定めていないことです。


しかし、それでは、労働者が実際に育児休業をとることが非常に困難となります。


そこで、こうした問題に対応するために、現在、次のような施策が講じられています。


その1つは、雇用保険上の育児休業中の所得を保障する育児休業給付制度です。


育児休業する前に支払われていた賃金の50%相当額が支給されます。


もう1つは、育児休業期間中の健康保険や厚生年金などの社会保険料の全額免除です(ただし、雇用保険については、賃金が無給の場合には保険料がゼロとなり、有給の場合には右支給額に一定の保険料率を乗じた金額を負担することになります)。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ