こんにちは。冨樫純です。
「世界遺産」についてのコラムを紹介します。
「世界遺産」というとその素晴らしさばかり強調されていると感じました。
エジプト·ナイル川流域でのアスワンハイダムの建設にともない、水没が危恨されたアブ•シンベル神殿の移築が世界各国の協力により達成された。
それが機運となって、世界的な自然景観 文化財を国際協力のもとに保護しようとする議論が高まり、ユネスコでの1972年世界遺産条約の成立、78年登録開始につながっていった。
現在、世界遺産は文化遺産と自然遺産、ならびに両者を含む複合遺産に分類されている。
世界遺産への登録は観光振興の切り札ともされるわけだが、登録はそれ以後の長い遺産保護活動の始まりの一歩にすぎず、世界レベルでの厳しい保護基準の順守が求められることになる。
保護施策の立ち遅れから存亡の危機にさらされる世界遺産は、危機遺産リストに掲載される。
環境の変化による歴史遺産の劣化(例: カトマンズ)、都市の高層化にともなう遺産建造物の埋没や景観変容(例: ケルン大聖堂)、略奪·盗掘·不法侵入など、危機の様相は異なるが、それらの遺産では保護の積極的取り組みにより、危機遺産リストからはずれることが目標となっていく。
数少なく貴重であるから世界遺産に登録されるわけであり、逆にいえば世界遺産は紙一重で危機遺産に変貌してしまうのである。
カンボジアのアンコール·ワットやインドのタージ· マハルも排気ガスや工場排煙といった環境問題の渦中にある。
また、多くの遺産はすぐれた景観やある文化の栄華を偲ぶものであるが、負の世界遺産とも別称される、戦争や差別など人類が犯した罪悪を記録す
る遺産もある。
ポーランドのアウシュビッツ強制収容所、広島の原爆ドーム、奴隷貿易のゴアなどがそれである。
多様な文化財や自然景観が世界遺産に登録されることによって、世界遺産の登録基準である 「人類が共有すべき普遍的な価値」の内実がつねに確認され問い直されているともいえるのである (中村
2006)。
下記の本を参考にしました
『社会学』
新版 (New Liberal Arts Selection)
長谷川 公一 他2名