こんにちは。冨樫純です。
「薬物の乱用と中毒(耽溺)」についてのコラムを紹介します。
薬物に中毒性があることは、周知のことですが、
快感のためたけではないようです。
ヘロインモルヒネなどのアヘン薬 (麻酔薬)、コカイン·アンフェタミンなどの精神刺激剤、その他の違法の合成薬物の使用は、最近日本でもかなり広がりつつある。
中毒状態に陥ると、これらの薬物が強力な動機づけの対象(誘因)となり、すべてを犠牲にしても、強迫的に (やむにやまれず)薬物を求める行動パターンを示し、薬物摂取のための行動が全人格を占めるようになる。
若いチンパンジーに実験的に毎日モルヒネの注射をして、どのような過程でこうした中毒状態に陥るかを調べた研究がある(Hebb, 1972)。
このチンパンジーは、5~6週間のうちに生理的変調をきたし、注射を受けないと落ち着きがなくなり、あくびをする、身体を掻くなど、不快な様子をして禁断症状を示した。
この段階では、生理的変調の段階にとどまっており、チンパンジーは、注射が不快な状態から解放するものであることを学習していない。
さらに1ヵ月から3カ月ほど連続的に注射をすると、動物のほうから積極的に注射を求め、実験者を注射器のところまで引っ張っていき、注射を促すようになる。
チンパンジーにとってこの段階では薬物が強力な動機づけの誘因となり、中毒状態になったということができる。
ヒトの場合、自分が薬物を使用していること、またその摂取が「不快」 な状態から解放して「快」をもたらすものであることをすでに知っている。
そのため第一の段階である生理的変調の中間的な段階と第二の段階の中毒状態とは、ほぼ同時に生じる可能性が高い。
したがって、すばやく中毒状態に陥りやすい。
ある種の薬物が、とくに強力な中毒状態(耽溺)を生じさせる要因として、第一に、それらの薬物が直接脳(ニューロン)に働き、自然の誘因をはるかにしのぐほどの過剰な活動をドーパミン系に生じさせること。
第二に、それらの薬物が反復摂取さると、薬物摂取を中断したときに「不快」な禁断症状を生じさせること。
第三に、それらの薬物は脳のドーパミン系ニューロンに持続的な変化を生じさせ、その結果ドーパミン系が薬物に対してより敏感になり、活性化しやすくなること、などが挙げられる。
このような経過から, もはや薬物摂取によって 「快」を感じなくても、ひたすら薬物を求めるようになり、薬物からの離脱がより困難になる。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名