とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

脳死と人の死

こんにちは。冨樫純です。


脳死と人の死」についてのコラムを紹介します。


よく言われることですが、脳死問題には、法律的、医学的、倫理的問題がそれぞれ関係しているので、難しいと改めて感じました。


いわゆる「脳死」に対しては、現在の臨床的な脳死判定基準では、実際には脳機能の全廃を保証しえないとする批判や、そもそも「人の死」を脳機能の有無だけで判定することに対する疑問が提起されている。


この問題は、1992年のドイツ· エアランゲンでの事件を契機に、あらためて注目を集めた。


この事件では、妊娠継続のために、裁判所が脳死状態の妊婦に成年後見人を選任し、その承諾を得て医療が施された。


残念ながら胎児は生きて生まれるまでには至ら

なかったが、問題は、裁判所が脳死状態の人に対しても後見人を選任したことにあった。


というのも、死者に後見人はつけられないので、脳死が人の死を意味するなら後見人の選任は不可能なはずだからである。


ところで、脳死状態でも妊娠の継続がありうるのは、現在の臨床的な脳死判定基準はたいてい、妊娠を継続させたり血圧の低下を防いだりするための脳 (とくに視床下部)の機能の停止までは必要条件としていないことによる。


なぜなら、脳死判定基準は本来、患者の蘇生不可能性を判定するものであって、その状態で脳の機能がすべて停止したことまでは意味していないからである。


つまり、脳死判定基準は脳の「すベての機能」の停止ではなくて、脳の「全体としての機能」の停止を判定するものなのである。


したがって、真の問題は、このように脳の機能の一部は残っている可能性はあるが蘇生はもはや不可能だという状態を 「人の死」 といってよいかどうかにある。


下記の本を参考にしました。


『はじめての法律学』HとJの物語

  松井 茂記 他2名

  有斐閣アルマ