こんにちは。冨樫純です。
「ハイデッガーに影響を与えた哲学者たち」についてのコラムを紹介します。
西洋哲学は、諸先輩方の哲学を批判したり、受け継いだりするのが常套なので、目新しいとは思いません。
ハイデッガーに影響を与えた哲学者は非常に多いですが、特に大きな影響を与えたのが、アリストテレス、カント、ベルクソン、キルケゴール、ニーチェ、フッサールです。
キルケゴール、ニーチェ、フッサールについて簡単に触れておきましょう。
キルケゴールは、哲学史においては、実存哲学の先駆者として位置づけられます。
実存とは、かけがえのない自己のあり方をさす言葉です。
例えば、人間を「理性的動物」や「社会的動物」といった言葉でとらえたとしましょう。
これらの規定は、確かに人間の本質を表したものかもしれません。
ですが、Aという人も理性的動物なら、Bという
人も理性的動物です。そういう意味では、人間Aと人間Bは交換可能です。
つまり、人間の本質をとらえようとすると、自分の固有な存在はそこからこぼれ落ちてしまうのです。
それに対して、他人と交換できない「真なる自己」の姿が実存なのです。
キルケゴールは実存を、「美的実存」「倫理的実
存」「宗教的実存」の3段階に分けました。
キリスト教者であったキルケゴールにとっては、神の前に独り立つ実存こそ、実存の最高度のあり方だったのです。
ニーチェは、ハイデッガーだけでなく現代の多くの哲学者たちに多大な影響を与えましたが、自らの哲学を体系的に構築することがなく、その思想の多くを「アフォリズム」という形式で表現した思想家です。
アフォリズムとは、物事の真実を簡潔に鋭く表現した語句です。
キルケゴールが実存によって本来の自己を取り戻そうとしたとすれば、ニーチェは生の本来のあり方を取り戻そうとした哲学者だと言えます。
ニーチェによれば、生は本来「カへの意志」なのですが、人間においてそれはゆがめられています。
人間は「病んだ動物」なのです。
そして、そのことを象徴するのがキリスト教道徳でした。
ニーチェにとって、道徳は生をゆがめ否定する
ものだったのです。
それに対して、ニーチェは生を絶対的に肯定するあり方を提示します。
それが超人です。
ニーチェにとって哲学とは、人類の病を治癒する
営みだったと言えます。
フッサールは「現象学」という、哲学の新しい地平を切り開いた哲学者です。
「事象そのものへ」というのが、現象学のスローガンです。
私たちはふつう、私たち自身が存在してもしなくても、事物は私たちとは切り離されてそれ自体で存在すると思い込んでいます。
このような思い込みは、私たちが事物と出会う根源的な経験をゆがめてしまいます。
フッサールは、「現象学的還元」と「形相的還
元」という操作により、事物を意識によって構成された意味として取り出し、世界についての根源的な経験を明るみに出そうとするのです。
下記の本を参考にしました
『1日で学び直す哲学』
常識を打ち破る思考力をつける
甲田 純生著
光文社新書