とがブログ

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エリザベス1世の強かさ

こんにちは。冨樫純です。

 

エリザベス1世肖像画」についてのコラムを紹介します。

 

国民の視線を意識し、統合するために自分の肖像画さえも利用したエリザベス1世は、やはり、強かだと感じました。

 

エリザベス1世は、自分と異なる意見を尊重しつつ、危機に際しては直接、国民に語りかけて苦しみをともにし、「処女」を外交や政治の武器にする、したたかで慎重。

 

しかし、すぐれた統治能力をもつ女王であった名君の誉れ高い工リザベス1世であるが、こと肖像画に関しては興味深い点がある。

 

それは彼女の肖像画は、 13歳の頃から死の直前まで、「ベリカン·ポートレート」「アルマダ·ポートレート」 「虹の肖像画」など、何点か残っている。

 

13歳頃の肖像画は、学問に打ちこむ女性の姿で描かれ、衣服も質素であるのに対し、1603年69歳で死去する頃に完成されたとされる「虹の肖像画」は目と耳が描かれたオレンジ色のマントを着用し、豪華な宝石がちりばめられた髪飾りをつけ、髪を高い結いあげ、乙女のようにカールした髪を肩にたらし、そして題名の由来となる虹を右手にもっていて、しかも顔には皺1つない。

 

後期のエリザベスの肖像画の共通点は豪華な衣装と装飾品。

 

そして白いドーランを塗ったような無表情。

しかし威厳のある顔立ちにある。

 

そもそもエリザベスは質素であったが、なぜ豪華な衣装をまとったのか、それは国民の視線を意識したからにほかならない。

 

男性中心の社会にあって女性でありながら男性に命令を発し、一時は正妻でない女性からうまれた子である庶子扱いされて、その命さえ危なかった彼女にとっては、豪華な衣装は権威を示す一つの手段となった。

 

また、老女姿の肖像画が存在しないのは、国教会の確立によって教会の内部から聖母マリア像を撤去したが、この聖母マリア像にかわるものとして、国民を統合するために自分の肖像画を使ったからだという。

 

実際のところ、あのミケランジェロの「ピエタ
でも聖母マリアは、あたかもイエスの娘のような若さに彫られている。

 

聖母マリアは当然としても、ルネサンスの時代、老女は悪徳の象徴であり、エリザベスにとっても
老化は敵だったのである。


下記の本を参考にしました。
 
『新 もういちど読む 山川世界史 』
「世界の歴史」編集委員会 (編集)

   山川出版社