こんにちは。冨樫純です。
「イスラーム教と男女の平等」についてのコラムを紹介します。
イスラーム教徒としてのアイデンティティを主張する象徴としてヴェールを着用する女性たちがいる事を知って、イスラム教に対する、批判的見方が変わりました。
イスラーム教を批判する際によく用いられるのが、男女が不平等で、女性は家のなかに押しこあられ、外出する際には髪や肌を隠すためにヴェールを身に着けなければならない、という類の言説である。
歴史的にみて、イスラーム教徒(ムスリム)の女性の社会的な立場は決して低かったわけではない。
たとえば、もっとも初期の事例としてムハンマドの妻ハディージャ (619 年没)があげられる。
彼女は富裕な商人として知られ、その経済的·精神的援助によりイスラーム教がおこったといっても過言ではない。
また彼女は、もっとも早くイスラーム教の教えを受け入れた信者であった。
その一方で,『クルアーン(コーラン)」には「男は女の擁護者(家長)である」(第4章第34節)とあり、男女の社会的な役割のちがいを強調している。
イスラーム法によれば、婚姻は男女間の個人の契約とされるが、夫は婚姻時の婚資の支払いと妻·家族を扶養する義務を負うかわりに、妻は夫に服従することが求められる。
しかし、20世紀にはいると、女性の法的·社会的な地位の向上を求める運動が各地域でもりあがり、管理職の女性や企業家としての経済活動はもちろんのこと、 医者や弁護士、大学などの教員として活躍する女性も多い。
このような背景のもとで、イスラーム法の規定の
合理的執行が模索されている。
イスラーム教と女性に関する問題の象徴の一つとしてよくとりあげられるのが、女性のヴェール着用の問題であるが、現在トルコやエジプトをはじめとする多くの国では、ヴェールを着用するか否かは個人の判断にゆだねられている。
実際に女性のヴェール着用が義務づけられているのは、サウジアラビアやイランなどのいくつかの国だけである。
しかし、そのような状況にあるのにもかかわらず、 1990年代以降イスラーム復興の潮流のなかで、ヴェールを着用する女性の数は増加傾向にある。
そこにみられるのは、西洋的な文明や生活様式に触れるなかで、これに対して疑問をもち、イスラ
ーム教徒としてのアイデンティティを主張する象徴としてヴェールを着用するという傾向である。
下記の本を参考にしました。
『新 もういちど読む 山川世界史 』
「世界の歴史」編集委員会 (編集)
山川出版社