とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

社会保障と国家補償

こんにちは。冨樫純です。

 


社会保障と国家補償」に関してのコラムを紹介します。

 


社会保障制度に関するニュースを見る時、役立つ知識だと思います。

 

 

 

わが国の社会福祉立法において、その制定当初、第2次大戦による困窮化への対応策という面を有していたことは否定できない。

 


また、これらの法律にかなり遅れて、1963 (昭和38)年に制定された老人福祉法の立法過程においても、第2次大戦によって子を失った老親の存在が念頭におかれていた。

 


しかし、これらの社会福祉立法は、生活困難という事情の存在に着目して給付を行うものであり、生活困難がどのような理由によるものかを問うものではない。

 


それゆえ、戦争被害に対する国家補償とは、この点で厳密に区別されるべきものであろう。

 


その一方で、第2次大戦によって戦病死した旧軍人軍属に対しては、戦争における戦闘行為が公務であった関係上、本来ならば、恩給制度が適用されるべきであった。

 


しかし、軍属等が一般困窮者より優遇されることは占領政策上好ましくないとの連合国総司令部(GHQ)の判断により、軍属への恩給および遺族への扶助料の支給が停止された(昭和21.2.1勅令 68-同月2閣令4)。

 


その後、昭和27年の平和条約の発効に伴い、戦傷疲者戦没者遺族等援護法が1952 (昭和 27)年に成立した。

 


同法は、当初、旧軍人軍属の公務傷病に関する障害年金、その遺族に対する遺族年金および弔慰金の支給を援護の主な内容としていたが、翌1953-(昭和28)年の恩給法改王によって、旧軍人軍属およびその遺族への恩給が復活した後は、数次の改正を経て、恩給法の対象とならない準軍属の範囲を拡張し、これらの準軍属に対する援護に比重がおかれるようになった。

 


しかし、民間の戦争被災者は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の対象者とはされず、国家補償としての側面を有する援護給付を受けることはできなかった。

 


この点に関して、最高裁は、戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償が憲法のまったく予想しないものであることを理由に、戦争犠牲者援護について立法府の広い裁量を認め、民間の戦争被災者に対する援護法を制定しなかったことを合憲と判断している(最判昭62-6-26<百選 119>)。

 


また、その後の裁判例も、外国籍を有する戦争犠牲者を戦傷病者戦没者遺族等援護法の対象としなかったことについて、同様の理由から憲法14条の平等原則に反しないと判断している(台湾人については最判平4.4. 28,在日韓国人については東京地判平6-7.15)。

 


国家補償としての援護法制は、その給付が旧軍人軍属およびその家族の生活を支えるという点で、 社会保障制度に似た機能を有する。

 


しかし、戦争という国の行為による損害ないし損失の補填を目的とするため、補償給付が生活困難に陥っていない場合にも支給される可能性がある。

 

 

 

下記の本を参考にしました。

社会保障法有斐閣 加藤 智章著