こんにちは。冨樫純です。
「外国人と社会保障」についてのコラムを紹介します。
マスコミ報道のような、外国人労働者問題だけでなく、社会保障法的にも問題があるのが分かりました。
外国人は入国後90 日以内に登録するものとされ
(外国人登録法3条), その数は1998 (平成10)年末現在151万人余で、これ以外に登録をしていない外国人も相当数有存在すると思われる。
このような状況を反映して、社会保障法の領域では近年、特に不法滞在者に関する紛争が増加している。
しかし、外国人と社会保障制度との関係は古くから問題とされてきた。
事実、健康保険法、厚生年金保険法および労働者災害補償保険法などを除き、わが国の社会保障制度には国籍条項を設けていたものが少なくなかった。最高裁も、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリーン事件:最大判昭 53. 10.4)としていた。
けれども、1981 (昭和56)年における「難民の地位に関する条約」の批准により、多くの社会保障制度から国籍条項が削除されるに至った。
しかし、生活保護法では依然として「国民」という用語が使用されており、不法滞在中の交通事故により重傷を負い生活保護を申請した事案に対して、 「生活保護法の適用を在留外国人に認めないことが、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱·濫用とみざるを得ない立法措置とまで断ずることはできない」とする裁判例がある(東京高判平9.4.24(百選84))。
次に、不法就労中の労災事故における安全配慮義務違反が争われた事案(最判平9.1.28) では、逸失利益(事故に遭わず、健康であれば得られたであろう利益)の算定が問題となった。
最高裁は、本件事故退職後3年間は会社から得ていた額と同額の収入を、それ以降 67 歳までの39年間については円換算で1ヵ月あたり3万円程度の収入を得るものとして逸失利益を算定した東京地裁の判断(東京地判平4.9.24)を維持した。
不法滞在者が国民健康保険法5条における医療保険の分野では、「住所を有する者」に該当するか否かが争われている。「在留資格のない外国人であっても、居住関係を中心とした客観的生活状況及び、その者の定住意思から、我が国に住所があると認めるべき場合も存在する」とする裁判例(東京地判平10.7.16 〈百選16〉)がある。
一方、「住所を有する」といえるためには、少なくともその者が適法にわが国に入国し在留しうる地位を有していることが必要である、とする裁判例(東京地判平7.9.27) もあり、対立している。
下記の本を参考にしました。