こんばんは。冨樫純です。
何年か前に、ハーバード白熱教室と題したテレビ番組がありました。
そこで、人気のサンデル教授の講義を見て、政治哲学というものに興味を持ちました。
ぼくと同じように興味を持った人は多いと思います。
今になって、体系的に政治哲学を学びたいと思い、まず、ネットで調べてみました。
今回のテーマは、ロールズの主張です。
カント的な義務論を受け継ぎ、政治哲学としてのリベラリズムを成立させるきっかけになったのが、ロールズ(John Bordley Rawls)の『正義論』です。
『正義論』は、それまでの自由主義(ニューリベラリズム/社会自由主義)的思想にある功利主義的な面を批判し、より平等・公正な社会の実現を主張した本です。
まず、ロールズが何を批判したのか把握しておきましょう。
ロールズが批判したのは、特1930年代以降に顕著になったアメリカの福祉国家的・大きな政府的な政策を支えた、新自由主義(ニューリベラリズム/社会自由主義)と言われる思想です。
※いわゆる新自由主義(ネオリベラリズム)とは異なる自由主義であることに注意してください。
そもそも、古典的な自由主義とは伝統的に国家ができるだけ個人の自由を侵害しないことを求める思想でした。
しかし、単なる自由主義では平等な社会が作られず、社会的・経済的な格差が生まれることが分かってきました。特に1930年代ごろから世界恐慌の影響でアメリカでも失業者が激増し、社会問題化しました。
こうした背景から、公共事業による雇用創出を中心とした国家の役割が、積極的に認められるようになります。
さらに1960年代には、アメリカでは公民権運動が行われ経済的格差だけでなく社会的な格差の是正のためにも国家の役割が主張されていきます。
こうした「福祉国家」「大きな政府」的な政治は、結果的に社会的・経済的格差を改善する大きな成果を残しました。
こうした「大きな政府」を認める自由主義思想のことが、「新しい自由主義」「ニューリベラリズム」「社会自由主義」と言われる思想なのです。
では、自由主義思想は批判されるものではないのでは?
と思われるかもしれません。
確かに、こうした成果だけ見ればそうなのですが、ロールズが『正義論』で批判したのは、自由主義思想にある功利主義的伝統です。
功利主義とは、ベンサムやJ・S・ミルが主張した社会思想であり、経済学の発展にも大きな影響を与えた思想です。
功利主義の特徴は、人間は快・不快という感情を行動原理にしている快・不快の量は計測可能である、道徳的に正しいのは、社会の快楽の総量を増やす行動、正しくないのは社会の快楽の総量を減らす行動である(最大多数の最大幸福)
と考える思想です。
J・S・ミルはこれに対して快・不快には質的な違いもあると主張しましたが、大まかには上記の思想だと把握しておくと良いでしょう。
功利主義は古典的自由主義にも強く影響を与え、アメリカの戦後のニューリベラリズム的政策のベースにもなっていました。
しかし、ロールズはこのような功利主義的伝統について、功利主義は「最大多数の最大幸福」、
つまり社会全体の幸福の総量を増やすことを良いこととしている。
しかし、それでは幸福の総量を増大させるために、一部の少数者が犠牲になることがあるのではないか、より平等・公正な社会を実現するための思想を考える必要がある
と『正義論』で主張しました。
下記のサイトを参考にしました。
https://liberal-arts-guide.com/political-philosophy/